岐阜県など、住宅地として再評価され、需要が拡大するエリアに注目をする中で、まだまだ旧態依然の状態にある建築業界とのミスマッチという問題も浮き彫りになっています。その中で、20代30代の若者たちがどのように「やりがい」「働き方」を考え、活躍していくかに着目し、情報発信をするメディアとして『RAKUZA』を立ち上げました。
RAKUZA編集チームは、Zenken株式会社で主に建築・住宅関連のメディアを手掛けるレジデンス事業部より発足しています。
注文住宅の建築業における三大職種の
岐阜でのやりがい・働き方を考える
岐阜に限らず、注文住宅の建築業において主な職種といえば「設計士」「住宅営業」「施工管理」の3つが挙げられます。一般的な「やりがい」としては、お客様へ注文住宅をお渡しした瞬間。
ですが業種や地域によって、それぞれの「やりがい」は少しずつかわってきます。まずは三大職種のやりがいと、その働き方について考えてみましょう。公家や社寺などへの従属を撤廃し、自由な商工業を発展させた信長の楽座令のように、新たな「やりがい」を見つけてください。
岐阜の暮らしをつくる、設計士のやりがい・働き方
設計士とは建築業界で設計業務に携わる人のこと。芸術家ではないですが名称の印象よりも仕事内容はクリエイティブです。街を活気づけたり人の流れを変えたり、直接的ではないにせよ街づくりに貢献できるのは設計士にとってのやりがいの一つかもしれません。またそのために新しいトレンドや技術を導入し常に新しいことにチャレンジできます。
自分のアイデアが建物に残るのは設計士ならではですが、建築物は時代とともにスタイルは変化し、設計士の仕事もこれまでとは違って豊富な知識をバックグラウンドにした顧客への積極アプローチが必要です。
岐阜の暮らしを提案する、注文住宅営業のやりがい・働き方
注文住宅営業は簡単に言ってしまえば家を販売する仕事ですが、単なる仲介販売とは違いオーダーメイドの新しい家を施主と一緒に完成させる喜びがあります。やりがいを感じるために必要なのは売上数字だけでなく、施主との厚い信頼関係。また地域の特性や環境をよく理解した上で、最適な家づくりの提案をすることが求められます。
注文住宅営業は家づくりのパートナーとして施主をサポートします。要望に応えるためにはコミュニケーション力はもちろん住宅の構造や設計の深い知識も必要で、中には建築士の資格も取得して仕事を極める人もいます。
岐阜の未来の暮らしを守る、施工管理のやりがい・働き方
施工管理は建築現場でスタッフの作業工程やスケジュール管理を行ったり安全や品質管理を行う仕事で、現場監督はリーダーとして現場の作業の陣頭指揮をとります。業務範囲が広く施工計画書の作成や安全管理、品質管理、工程管理まで行うので決して楽な仕事ではないですが、チームワークで完成した際は最高の達成感を味わえます。
建築現場で全体の流れを把握して作業管理を行うのが中心ですが、様々な困難を乗り越えて計画内に施工完了する喜びや満足感があります。仕事は大変ですが実務経験を積んでいけば将来求められる人材に成長できます。
「仕事のやりがいは会社に与えられるものではなく、自分から見つけるものだ」ある意味で、その一般的な考え方は建築業界でも同様といえます。ですが、若者世代の活躍が早急な課題でありながらも、なかなかその場が提供されない状況にある岐阜では、自分自身が「何にやりがいを感じられるか」を考えた上で、そのやりがいに直結する環境へと身を移すことがテーマになります。
最近では若者世代が積極的に、新たな環境づくりへと動き出すムーブメントも生まれつつあります。建築業界を諦める前に、まず一歩動いてみてはいかがでしょうか。
やりがいと働き方を提案する
岐阜の建築会社の新たな取り組み
岐阜において若者がすぐに活躍できる場がないのならば、自らつくりだそう。
そう思い至り、実行に移した若者がいます。その名は、グランハウス一級建築事務所の創業者、若原涼太氏。若干30歳ながら、同年代の社員たちと共につくりあげた建築事務所は、岐阜でも指折りの建築件数を誇る会社として注目されはじめています。
岐阜の地に安定した繁栄をもたらすため、旧態依然の世の中への革新を試みた信長の「天下布武」のような、若者たちの新たな挑戦を取材しました。
設計事務所の創業者 若原 涼太(30)
自らも設計士として第一線で活躍しながら、設計事務所を創業した若原涼太氏。キャリアや年齢に関係なく率直な意見を言い合えるように、役職や上下関係をつくらない会社を立ち上げたといいます。若原氏が取り組む、「働きやすい建築会社づくり」とは何か、追求していきます。
グランハウス一級建築士事務所
岐阜県内での施工実績を豊富に持つ一級建築事務所「グランハウス」。設計士と直接話す家づくりを掲げ、手の届きやすい価格帯にて、オーダーメイドの注文住宅を手掛けています。30代の創業者を中心に、若手の設計士・現場監督たちが第一線で活躍している建築事務所としても注目されている会社です。
グランハウス一級建築士事務所は2017年に創業した、岐阜県内でも新しい建築会社です。社長をはじめ、所属している設計士はみな20~30代前半の者が中心。若い社員が多いからこそ、当然その感性も瑞々しいものが集まっており、常に新しいことを取り入れようという動きと、それをサポートする体制が整えられています。
グランハウスの最大の特色ともいえるのが、一般的な住宅営業のスタッフを設けていないことです。全員が設計士としての知識・スキルを持ち、お客様とイチから家づくりをしていく体制をとっています。細かい要望が伝わりやすいというだけでなく、営業の人件費をカットしているため、低コストで家づくりを提供できます。
建築業界の常としてグランハウスも休みが多い会社である、とはいえません。お客様が来店される土日はもちろん、着工前の期間などは残業が続くこともあります。ですが自分自身でスケジュールを確定するため、休日や定時退社などは可能な範囲で自由に取得することが可能です。
グランハウスが最も大切にしていることの1つが、「誰でも自由に意見を出せる環境づくり」です。自由な意見交換を促すためには、やはり役職による上下関係は不要という考え。いわゆるピラミッド構造の会社ではなく、円のようにお互いがお互いを同等に接することができます。
従来のピラミッド型の組織体制をとっている建築会社では、評価の指標がわかりにくいという問題があります。グランハウスでは設計士なら何件の物件を設計したか、現場監督なら何件の物件の施工に携わったかという、明確な数で評価されています。この件数はノルマとして会社から与えるのではなく、あくまで個人個人が自分の目標として設定ができます。
グランハウスでは「友達と共に家づくりをする」というコンセプトを掲げています。ここでいう「友達」とは、ただ仲が良いだけのなれ合いの関係ではありません。お客様とスタッフが本音を言い合えるような、そして相手のことを本気で思い、行動するような、お客様のことをとことん考えた家づくりを実現しています。
若原氏がグランハウスを岐阜密着の会社として立ち上げたのは、地元への貢献をしたいという気持ちがあったそうです。岐阜で建築の仕事をしていれば、友人・知人や親戚など、お世話になった方の相談にのることが可能。地域で建築業に携わるからこその「やりがい」といえそうです。
転職から切り開いた今、気付いた「やりがい」
岐阜の建築会社グランハウス社員にインタビュー
岐阜の建築業界へ身を置き、多方面で活躍をしていながらも、最終的にグランハウス一級建築士事務所へ転職した3人の若者へインタビュー。なぜ転職をしたのか、いま実感している「やりがい」とは何か、リアルな声をお届けします。
家を売る営業が、
家をつくる設計士へ
岐阜県内の有名建築会社の営業として、トップセールスを走り続けていた桐山さん。トップを走り続けたからこそ、営業という職種の限界を感じたそう。お客様にとって一生に一度だけの大きなプロジェクト「家づくり」の根幹に触れるため、設計士への転身をした決意とは。
「私にしかできない仕事」ができる設計士へ
インテリア家具の販売から住宅営業のサポート、設計、そして有名テーマパークのオープニングスタッフなど、様々な業務を経験してきた羽賀さん。「誰でもできる仕事」ではなく「私という個人を見てもらえる仕事」を実現するため、設計士として日々活躍を続けている。
岐阜で一番の建築事務所を目指す現場監督へ
営業から現場監督、アフターメンテナンスまで、幅広い知識を有す永井さん。建築への情熱は人一倍あるものの、職場環境や評価体制に違和感を覚えることも少なくなかった。「仲間たちと岐阜で一番の建築事務所をつくる」という目標を見つけるに至ったきっかけとは。
グランハウス一級建築士事務所の創業者および社員の方へのインタビューを通じ、まず感じたことは「自ら行動する重要性」でした。現在の環境への疑問や悩みを放置するのではなく、さらにステップアップをするためには、理想を実現するにはどうすべきか。考え、行動に移したことで、新たな道が切り開き、志を同じくする仲間と出会うことができた。
転職をする際に何を重視するのか。単純な募集要項、給与や待遇だけではなく、その先を見据えて企業探しをする重要性が実感できる結果となりました。
この先40年間、岐阜で活躍し続けるために
岐阜の建築業界で自分自身を変革するためには、まず現状の問題点を明確にする必要があります。ここでは建築・建設業への取り組みやUターン就職の実際を調査。その上で今後建築業界に必要なことと求められる人材について解説します。
また、岐阜県の2017年の平均年収は約446万円(※1)。有効求人倍率は過去8年間は右肩上がりで推移しています(※2)。その他、名古屋との比較や人気の職業、20代・30代の年収や生活事情など気になるポイントをまとめました。
一部の有力商人の特権や独占を廃し、城下町や港町の発展を目指した楽市令のように、今までに捕らわれず未来を見据えた仕事への向き合い方を模索してください。
岐阜の建築業界のこれから
建築業界における問題点
閉鎖的な多階層の請負構造の中でトップダウン型企業が多い
建設業界でよく指摘されることに多階層の請負構造とトップダウン型の企業が多いことがあります。また閉鎖的な業界体質により世の中の変化に疎くなっているのも問題です。
将来性を考える
建設業の割合が高く今後も名古屋のベッドタウンとして伸びる
岐阜県の全産業に占める建設業の割合は高く就業者数も多いですが、古くから名古屋市のベッドタウンとして人気で、広い土地を手に入れやすので今後も伸びると予想されます。
Uターン就職の実際
県をあげてUターン就職を支援しており建築関係の求人も安定
岐阜県が開設した岐阜県中小企業総合人材確保センターがUターン就職を支援。建築・土木関係の求人も安定していて、親の仕事に憧れて建築業界で再就職する人も多いです。
求められる人材とは
職種の範囲を超えた知識とコミュニケーション能力が必要
設計の仕事ではクリエイティブな能力に加えプレゼンテーション力が必要。逆に営業は設計の基礎知識が求められます。施工管理ではマネジメント力を磨くことが重要です。
岐阜で働くということ
岐阜の建築士・設計士の求人事情
岐阜県で働く人たちの平均年収は、正社員の方で332万円程度となっています。また、アルバイト・パートの方の平均時給は、886円となっているようです。全体の幅としては、「283〜781万円」と比較的広くなっているため、経験や求められるスキルなどによって変動するといえるでしょう。
岐阜労働局が発表しているデータによると、建築・土木技術者等の有効求人数は940件、有効求職者数は135人、有効求人倍率は6.962となっています。この有効求人倍率は他の業種と比較しても高い数値。まさに、売り手市場であると言えます。
求人数や事業所・就業者数の割合、有効求人倍率のデータを紹介しましたが、全てのデータで、岐阜県は建築士や設計士として就職しやすい地域であるということがわかりました。また、岐阜県は建築業界の需要の高まっていること、県自体が建築士の育成に取り組んでいること、歴史的な建造物が多いことなど、魅力も豊富です。建築士や設計士になりたい人にとって、岐阜県内での就職は一考する価値があります。
名古屋に出るか、岐阜で働くか
年収や求人倍率はあまり差がない
名古屋と岐阜の平均年収は、名古屋の方がやや上ですが有効求人倍率はほぼ同じです。
岐阜で人気の職業って?
岐阜県内でよく名の知られている流通大手や銀行業が人気
職種としては事務と運搬・清掃等の求職者が多いです。岐阜を代表する人気企業としてはセリア、バローホールディングスなどの流通大手や十六銀行や大垣共立銀行があります。
交通期間の発達などにより、今後も注目を集めていくであろう岐阜県。名古屋など近隣エリアでの就職ももちろん魅力的ですが、物価の安さや需要の拡大を考えれば、岐阜で働く魅力は十分にあると考えます。昔からの友人や親戚たちの生活へ、直接的な関わりが持てるというのも、地元で建築業に携わる方にしか味わえない醍醐味ともいえそうです。